From Southern

サザンカンパニーからの月イチコラムです。
書いているのはサザンカンパニーのスタッフ、写真やイラストは、サザンカンパニーと関わりのある方に依頼しています。

第11回「タウン誌カフェ」の可能性と今後の課題
―「タウン誌カフェ」を開催して―

タウン誌カフェのチラシと、『みやこわが町』特別号

今年11月15日(火)から20日(日)まで、かぐらむら編集室では
神楽坂2丁目にある「ギャラリ―カフェ パルス」で
「タウン誌カフェ」という企画展示を初めて実施しました。
「○○カフェ」というと、いま流行りの言葉のようですが、
企画の意図は軽いものではなく、タウン誌という地域密着型のメディアが、
3・11以降どう変わっているのか、あるいは変わらないのか。
それを知りたいという思いがまずありました。
そのために、全国のタウン誌、地域雑誌、
コミュニティマガジンなどを集めるところから始めました。


「タウン誌カフェ」開催のきっかけ
 直接のきっかけとなったのは、岩手県宮古市で昭和52年の創刊から脈々と続く「月刊みやこわが町」です。このタウン誌が、被災した翌月、4月20日に震災と津波の特別号を発刊したことによります。黒い津波が防波堤を乗り越えて宮古の町をのみ込むさまは、東京にいてもテレビなどの映像で目に焼き付いていました。奪われた生活の再建に誰もが追われるなかで、ひるむことなく取材・編集を続け、390号目のタウン誌を発行したことを知りました。その特別号は、宮古市の惨状を6つの地区別に写真と文章で記録したものでした。

地域に何を伝え、何を分かち合うのか
 いままでタウン誌というと、グルメ情報、歴史・伝統文化、イベント情報、人の紹介などが中心となっていましたが、3・11以降は、自然災害を特集に組むタウン誌が発行されるようになってきました。特集に組まなくても、記事の端々や文章のトーンに、あるいはアトガキに変化の兆しが現れています。タウン誌の特性が、地域密着型であり、いつでも地域と向き合っているのがタウン誌であるならば、地域が危機に瀕している時に、タウン誌は、地域に何を伝え、何を読者と分かち合えばいいのか。こうした中で取材を続け、発行し続けるタウン誌があることに心を動かされました。

東北のタウン誌が一番多く集まった
 会場に集められたタウン誌、地域雑誌は、80~90誌。見ず知らずの編集者や発行人に、企画の意図を伝えるのに、手順がつたなかったこともあって、150通近い依頼のうち賛同していただいたのは、6~7割。1割近くは、休刊の報告と事務所移転による返送。フリーペーパーが半分で、有料誌が半分でした。もっと丹念に時間をかけて探せなかったのが、残念です。
 展示の仕方は、主にエリア別に分け、スタンドに立てかけたのが7割、3割近くが大判のために平積みに。一番数が多いエリアが、東北、次が関東(首都圏)でした。

ゼミの学生やプロの編集者も多く来場
 会場には平日にも関わらず、多くの方の来場をいただき、中には法政大学でタウン誌をゼミのテーマにしている学生15人と先生の団体もありました。会場内には、「月刊みやこわが町」の販売コーナーも設けたところ、震災以降に発行された号への関心は高く、特別号は早くに完売してしまいました。また、青森市の「ゆきのまち通信」「あおもり草紙」、川越の「小江戸ものがたり」、西東京の「武蔵野から」、文京区の「空」、台東区の「湯島かいわい」、神田の「本の街」三重県の「owasebon」などタウン誌の編集者・発行者も多く足を運んでいただき、交流できたことも収穫でした。
 会場は、カフェが併設されているギャラリーなので、読みたい冊子をテーブル席まで持って行ってゆっくりと読めるよう工夫をしたのですが、その場で立ち読みする人が多いのは、予想外でした。

田村紀雄先生を囲んだ茶話会
 最終日の日曜日には、元東京経済大学教授の田村紀雄先生を囲んでの茶話会を行いました。タウン誌という用語がわが国で使われだした1970年頃から地域メディアの研究を続け、多くの著作のある先生には「タウン誌ウオッチング40年」という題で、わが国の社会環境の変化と、タウン誌の変遷について語っていただきました。34年前の1977年に神田にできた「アクセス」という「タウン誌喫茶」の話、1985年新生NTTが主催した「タウン誌フェスティバル」、その審査員として深く関わった先生ならではの貴重なお話。また、タウン誌づくりは「社会運動」と捉え、深みにはまれば「麻薬」との指摘など参考になる話が多くありました。
 田村先生の話の後も、質疑や談話が続き、タウン誌をめぐるホットな3時間は、「当カフェ」の最終日を締めくくるのに最良の時間でした。

地域社会を元気づけるメディアとして
 地域に生きるタウン誌と被災地の関わりは、今後とも急務の課題であり、まだ始まったばかりの長期的な課題といえます。被災した地域が復興していく時に、タウン誌という一見アナログな紙媒体のメディアが、地域社会を元気づける確かな、そして必要な手段として活かされることを願っています。

「タウン誌カフェ」は次の開催地を待っています。(長岡)