From Southern

サザンカンパニーからの月イチコラムです。
書いているのはサザンカンパニーのスタッフ、写真やイラストは、サザンカンパニーと関わりのある方に依頼しています。

第3回「モノを観る力」

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デザイナーになるために、資格を取る必要はない。今すぐ宣言さえすれば、誰にでもデザイナーになることができる。世のデザイナー、少なくとも日本のデザイナーは“自称デザイナー”である。もちろん、皆から認められたデザイナーと自称デザイナーでは雲泥の差ではあるが。

では、どのような人がデザイナーに向いているのだろうか。色彩、空間などのセンスはもちろん、歴史を踏まえつつ流行をとらえる感覚、さらには今、世界で起きている情報の知識など、さまざまな要素が必要だ。

その中でも最も重要なのは“モノを観る力”だろう。ここでいうモノとは、形になった目に見えるモノだけではなく、音やコピーとなって現われた思想でもある。そして、“観る”とは、ただ単にモノを見つめるだけではない。モノの本質を見抜くこと、つまり洞察力である。この力がデザインをする上で必要不可欠だと思う。まあ、デザイナーであれば誰でも気付いている点ではある。

広告デザインにおいては、企業がユーザーに対してメッセージを発信する際に、いかにストレートに、ダイレクトに伝えるかが勝負になってくる。そのメッセージには時折、余計なものが附随してくる。ここでデザイナーの“モノを観る力”が試されるのだ。メッセージを精査し、余計なものを取り除き、純化させる。これは、デザインで最も時間をかける必要のある行程でもある。純化されたメッセージは、スッとユーザーの胸に飛び込むことができる。

さて、この“モノを観る力”をいかにして鍛えるか。それはとりあえず“観る”ことである。

例えば、美術館で絵画を観る。ひとつの作品をよく観ていると、筆のタッチが微妙に違っていたり、使用している画材が解ったり、また一見では判別できないようなところにモチーフがあったりするだろう。これらはよくモノを観た末に得た結果である。また、ただ観るだけではなく、描く側と観る側の心理を分析したり、その絵画が描かれた状況や過程など、様々な視点から調べることも“モノを観る力”を鍛えることに繋がっていく。

他にも映画、写真、建築、音楽、文学などでも同様のことが言える。また、普段から何気なく通る道ですら、五感を研ぎすませば見えてくるものもあるはずだ。 モノを観ることによって得た発見は、新たなる知識として蓄積されてゆき、デザインのヒントとなり、幅も広がるだろう。人間性の向上にも繋がる。 私は今日も観る。飽くなきデザインの向上を求めて……。 (デザイナー/深澤琢磨)